
漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日
小津夜景[著]
エッセイ
南仏ニースと京都にくらす俳人、小津夜景による漢詩翻訳エッセイ最新刊。
道を歩いているとき、美容室の椅子に座っているとき、お風呂につかっているとき――くらしのさなかにふと訪れる詩のことば。
杜甫、李白から菅原道真、嵯峨天皇、明治の狂詩まで、古今の漢詩を自在にひもとき、日常のなかにあざやかに置き直す27篇。
文明の利器に囲まれようとも、現代を生きる我々の感情そのものは、きっとそれほど進化も退化もしていないのでしょう。
漢詩を軸にして時を超えた心のつながりが生まれ、孤独が薄れていく、そんな体験でした。
――伊沢拓司(QuizKnock)
はじめに
黄色だけが残った
風呂屋と山鯨
書庫に水鳥がいなかった日のこと
弾かれるわたしの時間
金と雪
良い午後を、と彼らは言った
降りどきを見失って
九月の抽斗をあけて
靴ひもを結びながら
死んでいない、まだ生きている
つり下げられた季節のための習作
エッグタルトと三日月
財布はいかにして開かれるか
散らかったままの話
夜明けのプレイリスト
ふくらんだり、しぼんだり
背中を撫でる水流
あれも桜餅、これも桜餅
センセイの夏
雲の工房
土は言葉より正直だ
爛柯はフレグランスの夢を見るか
昼の裏側
世界がやわらかくなる日
突然の終わりのあとで
前略、北窓より
夜の音はすべて代役
あとがき
本書に登場するおもな詩人たち
小津 夜景(おづ やけい)
1973年北海道生まれ。俳人。句集に『フラワーズ・カンフー』『花と夜盗』、エッセイに『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』(文庫版『いつかたこぶねになる日』)『ロゴスと巻貝』、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡集に『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』などの著作がある。