素粒社
おくれ毛で風を切れ
古賀及子[著]

おくれ毛で風を切れ

電子版あり
カテゴリ
エッセイ
定価
1,980円(税込)
判型
B6判
製本
ソフトカバー
頁数
304頁
ISBN
978-4-910413-13-6
ブックデザイン
鈴木千佳子
発行日
2024.2.2
2
2024.04.10

内容紹介

「本の雑誌」が選ぶ2023年上半期ベスト第2位『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』の著者による日記エッセイ
まだまだあった前回未収録作に、書き下ろしを含む新たな日記を収めた第2弾

母・息子・娘、3人暮らしの、愉快で多感な日々
「暮らして、暮らして、暮らしきる」

推薦文

日記文学のオールタイム・ベストに加えたい。
――牟田都子さん(校正者)

実在する優しい日々が私の心をほぐしてくれました。
古賀さん! こっちまで幸せになっちゃいますよ。
――藤原麻里菜さん(「無駄づくり」発明家)

目次

2019年2月~2020年12月

2019年

宇宙がすごい広いんだが
車窓を見る人は黒目がカクカク動く
「はい、論破」みたいに幸せを
猫をさがしていそうな人たちだった
燃えるごみよりも資源ごみのほうが多いでしゅよ
情報は目でとまって頭にまで到達していなかった
目の前で大福が売り切れて誇らしい
悔しがるころは過ぎた
「ねえ見て!」があるから人は連れ立ってどこかへ出かける
全力で走りそしてふたりは出会った
人間社会で成長することそのもの
まあまあ家
気づかないまま傷つく
これからほっぺたをバンバンにふくらませる宣言
こういうものなんだからとだまっていた
伝えたい豆知識があるんだ
別れのメールをローマ字で書いた
同じ家に同じ気持ちの人がいる
腐りゆくのを見るのがいやで腐る前に捨てた
それは個人の感想だろう
氷を揉み溶かしとがらせる
こっそり水道水を飲む
背負ったネギが夕日を受けて輝く

2020年

私いまかなりドラえもんっぽいことになってないか
もしかして楽しかったの?
くれぐれも家を燃やさないように
カーっとした量のハンドクリーム
ここに真の卒業がある
よくない予感を共有する
同じ家でも今度ははじまる
スポークが折れて感心感心
ポップコーンをはぜさせる人を離れたところから見る
鳩サブレーを食べる自分の様子をふと思う
感激して「優しい!」と冷やかす
新しいカードに無を移行する
気安い友人や家族だけが目撃する
ふんわりではなくふっくらしている顎
もしフィクションで描かれてなかったらどう思ったろう
消費はむずかしい
血管が動くのを見あう
事情を誰かに話すときはいつも自信がない
冷えた生卵を持ち続けて手がつめたい
意識の私を無意識が急に起こす
赤や緑や青が次々に色を変え光っている
テトリスでこんなに遊んでしまう

2022年3月~2023年8月

2022年

これだ漫才の起源
有象無象のドーナツ
お菓子が配られているのではないか
新入りバイトの態度で生きる
13で割る!
中2の景色
これはさては呪術だな
「まあいいか」が「まあよくない」をチョイスする
水漏れを飼う
ミロがなくなる
ふすまに海を
きっとうまい肉だ
大人に連れていかれる
このまま無印良品に飲み込まれる
悪口は味
黒か紺か
そんな個性的な営業時間
夜のとばりのようですね
このままはやく朝にしてしまいたい
わたしではないあなたたち
おれはひとりしかいないのに
思考のあさましさに感じるハングリー精神
無機物ばかりが登場する人生の走馬灯
わたしたちのアイコンタクト
ふりかけが大好きな人たち

2023年

おくれ毛で風を切れ
突然一生会わない人になる
夢のもたつき
布団をならべて夜ねむるよう
楽しみにしている人がいると心強い
家は家であり、家っぽいものでもある
人間が自由だとよく知っている
孤独な意地汚いお祭り
抜けも飛びも刺さりもしない
きみの名前を知ることそのもの
ひとつの世界の終わり
まんじゅうにどこまでも盛り上がってしまう
小枠も小枠な生き方の多く
手のひらで光ってはじける塊の時間
いちばん大きな音のカッター
本気の餓鬼でもなかったようで
尊び信じて優しく
弁当の責任と関心
今日は一緒に行けてよかった
現実だったらあんまりだ
畏れることない不公平感
バレエと敬礼

著者プロフィール

古賀 及子(こが ちかこ)
ライター、エッセイスト。1979年東京都生まれ。2003年よりウェブメディア「デイリーポータルZ」に参加。2018年よりはてなブログ、noteで日記の公開をはじめる。著書に日記エッセイ『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』(素粒社)。

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